仕事を終えて家に帰ると、妻から「上の子は愛に飢えてるから、いっぱい遊んであげて」と言われた。妻はその手の冗談をいう人ではない。
不安になって調べてみると、真っ先に出てきたのは『上の子可愛くない症候群』という症状。終いには『上の子が可愛くなくて当たり前』だという記事タイトルで煽る幼児教育研究家まで出てくる始末。
子供にイライラしてしまうときもある。子育てするのが本当にイヤになるときだってあるけど…。お願いだから、上の子が可愛くないを正当化しないであげて欲しい。
過去の記憶との比較は幸せを生む
上の子はお腹が空いたら泣き、ウンチが出たら気持ち悪くて泣き、抱っこをやめても泣く赤ちゃんだった。1人目の子供で右も左もわからないことも相まって、朝から晩まで付きっきりで子育てをした。だから凄く大変だった記憶がある。
それに比べて下の子はお腹が空いたとき、ウンチが出たとき以外は殆ど泣かない。ベッドに降ろすとムニャムニャ言いながら気がつけば寝ている。上の子で子育てを経験した後だからかも知れないけど、本当に手がかからないと感じる。
上の子が下の子と同じ月齢だった頃との比較は、家族の会話を生み、子育ての糧となる。結果的に幸せを生む行為となる。
上の子と下の子の比較は不幸しか生まない
例えば、2歳になった上の子はイヤイヤ期真っ盛り。話せる言葉の種類も多くなり『可愛い』と感じる瞬間が増えた反面、子供の自己主張が強く親の思い通りに進まないことも多くなり『可愛くない』と感じる瞬間も増えてくる。
それに比べて、新生児の下の子は片腕に収まるほど小さくて、その行動は『可愛い』と感じる瞬間ばかり。些細な反抗と言えばミルクの最中に寝てしまうことぐらいで『可愛くない』と感じる瞬間は殆どない。
全く異なる月齢、年齢の2人を比較する行為は、家族にとって、子育てにとって不幸な結末しか生まない。
上の子の行動は親の目に「成長した」と映ってしまう
親が嬉しいと感じる子供の行動は、親の目に「成長」として映ってしまう。
- ママが下の子におっぱいを飲ませているとき、上の子は哺乳瓶を片手に「自分が飲ませたい」と言ってくる。
- パパが下の子を抱っこしているとき、上の子は両手を前に出して「自分が抱っこしたい」と言ってくる。
- ママが下の子のオムツを替えているとき、上の子は新しいオムツを引っぱり出して「自分がオムツを替えたい」と言ってくる。
わが子を見つめる親の目線には「子供の成長に対する願いのフィルター」がかかっているから、そういった上の子の行動は「お兄ちゃん、お姉ちゃんとしての成長」と映ってしまう。
上の子が行動を起こす前に生まれる一瞬の間
上の子が「自分が」という行動を起こす少し前には、必ず一瞬の間がある。
それは意識しないと見逃してしまうほど小さなもの
それは意識していないと見逃してしまうほどに小さな、小さなもの。下の子の世話に忙しいママが気づいているかはわからない。
下の子に対してやってあげられることの少ない、パパだからこそ気づけたのかも知れない。
これは思い込みや勘違いではない。
まだまだ小さな子供である上の子の中で起こっている、辛くて悲しい葛藤が作り出す一瞬の間。
上の子から伝わる我慢と寂しさ
ママの腕に抱かれる下の子を見た上の子は「自分も抱っこして貰いたい」と願った。
願いそのままに抱っこを求めると「赤ちゃんがミルク飲んでるから」と拒絶された。それならばと、ママと下の子の間に入ろうとするも、やっぱり拒絶されてしまった。
拒絶された経験から「自分が抱っこする」という答えを導き出した。だって、抱っこするとパパやママから褒めて貰えるから。褒めて貰うと嬉しい気持ちになれるから。
本当は「自分が」じゃなく「自分も」がいい。
本当は「自分も」じゃなく「自分だけ」がいい。
下の子が生まれる前みたいに、自分のことだけを見て欲しい。
そんな気持ちをぐっとこらえて、下の子と肩を並べて、時には「お兄ちゃんだから」と一歩後ろに引いて行動をしている。
まだ、二歳やで。
たった二年しか生きてないのに、我慢することを知っている。寂しさを隠す術を知っている。
それはもう、見ていて辛くなるほどに。
上の子の頑張りを認めてあげて欲しい
下の子が生まれた瞬間に、上の子は立派なお兄ちゃんになるの?
そんな訳がない。
パパやママから「やさしいね」や「ありがとう」と言われ、嬉しそうに笑う上の子は、二歳にして立派なお兄ちゃんなの?
そんな訳がない。
親が思う勝手な『お兄ちゃん、お姉ちゃんの姿』を投影できれば褒めて貰える。そうで無ければ褒められるどころか叱られてしまう。
パパやママにもっと自分のことを見て欲しいから、イタズラしたり、下の子に強く当たったりするけど、やっぱり叱られてしまう。
パパやママに褒めて欲しいから、良いお兄ちゃん、良いお姉ちゃんになるしかない。
パパやママが抱える子育ての苦労なんかより、何倍も苦労してるんだよ。
上の子だって、めちゃくちゃ頑張ってるんだよ。
上の子が可愛くないは許せない
上の子と下の子を比べてとか、比べてないとか。一過性のものだから大丈夫とか、そんな話じゃない。間違っても「上の子が可愛くない」なんて口にしないで。
生まれてから数年しか経っていない小さな子供が、こんなにも必死になって頑張ってるんやで?そんな頑張りを見ようともせず「可愛くない」なんて言うな!
上の子は可愛い!!
あとがき
愛情を注ぐ対象が1人から2人に増えたという事実。下の子の方が、上の子よりも手をかけなければいけないという事実。これらは変えることができない。
そんな生活の中でも、妻は愛情たっぷりで上の子に接してくれている。それでも、上の子からは隠しきれない我慢と寂しさが伝わってきてしまう。
上の子に一切の我慢をさせないことはできないけど、寂しい思いはさせたくないから、今まで以上に子供と向き合える時間を増やせるように頑張るよ。
だから、みんなも頑張って。